セミの抜け殻しらべ

はじめに

 セミは地中で数年間幼虫時代を過ごし、成虫も長距離を移動することはないと考えられていることから、生息場所からあまり移動せず、その土地の環境変化の影響を受けやすいと推測され、その地域の自然環境を計るモノサシ、すなわち指標生物として期待されています。セミは種類により生息環境が異なるため、継続的に調査を行うことで、土地の環境変化や気候変動を検証する助けになると思われます。

 セミの抜け殻は幼虫から成虫へ羽化する際の脱皮殻で、抜け殻の存在は、その場所で1匹のセミが羽化した証拠として、定量的な調査が可能となります。また、

  1. セミはどこにでもそれなりの数が生息している。
  2. 種類が限られている。
  3. 抜け殻によるセミの種類の見分け方は、少しだけコツを覚えれば誰でも簡単にできる。
  4. セミの抜け殻は逃げないため子どもでも簡単に採取できる。
  5. 生きているセミを採取する訳ではなく、セミの抜け殻を主な餌としている生き物もいないので、抜け殻を採取しても生態系に与える影響が小さくて済む。

などの理由から「セミの抜け殻による調査」は全国各地の個人・団体によって実施されてきました。

   しかし、個々の調査の手法が統一されていないために比較することが難しく、そのデータの信頼性にも大きな差がありました。また、調査結果の保管が不十分で、せっかくの調査データが失われて記録ではなく記憶のみが受け継がれてきました。

 そこで、日本自然保護協会自然観察指導員の有志を中心とした市民ボランティアによって「セミの抜け殻しらべ市民ネット」を立ち上げ、「セミの抜け殻しらべ」を統一した手法で継続的に実施し、調査結果をまとめて保存することにしました。

 このことにより、信頼性の高い基礎的情報を収集すると共に、他地域の結果との比較やセミの生息状況の変化から、その地域の環境変化に気付こうという試みです。

   思いを同じにする仲間と共にデータを収集し「土地の健康診断」「気候変動の影響」などの評価において、意義のあるモニタリングへと高めていきたいと考えています。そのためには、セミの抜け殻しらべ市民ネットへの参加者同士が共働で検証できるネットワークも合わせて構築する予定です。

 全国各地での継続的な調査を実施していくために、多くの皆様の参加をお願い申し上げます。

2009年某月吉日

セミの抜け殻しらべ市民ネット 会長 田邉貞幸